
ミルラ精油は木の樹液が固まった樹脂から抽出されます。
フランキンセンスと同じように古い歴史があり、太陽神を崇めるため正午にミルラが焚かれたり、ミイラ作りに使われていました。
現在では精油のほか、香水ブランドのジョーマローンロンドンの「ミルラ & トンカ」など、フレグランス商品にも利用されています。
ミルラの香りや特徴、フランキンセンスとの違い、ミルラ精油も固まるのか、スピリチュアルな精油といわれるのはなぜ?などについてみていきましょう。
また、ミルラ精油の効果・効能と使い方、ブレンドレシピも紹介していきます。
ミルラとは?

ミルラって、どんなもの?
ミルラの木はアフリカを原産とする3mほどのトゲのある樹木。
樹皮に傷をつけなくても、乳白色の樹液が自然にしみ出します。
ミルラ精油の元になる樹脂はソマリアやエチオピア、インドが原産国で、エチオピアの遊牧民は牛を放牧しながら、赤褐色に固まったミルラの樹脂を見つけると、素手ではぎ取り採取。
精油の生産業者は原産国から輸入したミルラの樹脂を約5日間かけ、大量の水を使いながら、水蒸気蒸留法でミルラ精油を精製していきます。
別名はマー・没薬(もつやく)といいます。
フランキンセンスの樹脂と同様にミルラも古くから、宗教儀式の香料や薬、化粧品などに利用されてきました。
現在でもスキンケアや歯磨き剤に使われることがあります。
古代エジプトではミイラを作るときに、殺菌作用のあるミルラが使われ、その他の樹脂や香油など混ぜ合わせたものを包帯に浸して、死者の体に巻き付けていきました。
ミルラは遺体の防腐効果を目的とし、ミイラ作りに多く利用されたことから、「ミイラ」が語源ともいわれます。
また、イエス・キリストが誕生した時に、東方から来た3人の賢者がフランキンセンスと黄金と共にミルラを贈ったとのエピソードが聖書に記されています。
ミルラとフランキンセンスの違いは?
ミルラとフランキンセンスの樹脂はともに宗教行事などに使われていたので、神秘的とされています。
しかし、同じ樹脂ですが、香りが少し異なりますね。
- ミルラ精油はスパイシーさとウッディ感、ハーバル感がある。
- フランキンセンス精油はレモンのようなさわやかさがある。
ミルラ精油 | フランキンセンス精油 | |
香り | ややスパイシーで、苦みとハーバル感も少しある | 甘さとレモンのような酸味が混ざった感じ |
歴史 | 古代エジプトから使用されていた | 古代エジプトから使用されていた |
科名 | カンラン科 | カンラン科 |
別名 | マー・没薬 | オリバナム・乳香 |
抽出 | 水蒸気蒸留法 | 水蒸気蒸留法 |
価格 | やや高め 10㎖ 6000円前後~ | 10㎖ 3000円前後~ |
持続性 | ミドル~ベースノート | トップ~ベースノート |
肌への作用 | あかぎれ、手荒れ、ひび割れなど スキンケアに。 | 乾燥肌、老化肌、しわ、たるみ、あかぎれなど スキンケアに。 |
保留剤 | 保留効果あり | やや保留効果あり |
ミルラ精油の効果・効能

心への効能
■鎮静作用
気分を静かに落ち着かせ、興奮しすぎた気持ちを鎮める。
■神経強壮
気持ちを強くして精神をとぎすまし、夢や希望を失わずに進む助けになる。
■催淫作用
幸福感や陶酔感があることから、性欲減退のときにもよい。
体への効能
■抗炎症作用
のどのトラブル、気管支炎や風邪、また胃腸が不調なときに。
口内炎や歯肉炎の予防として、歯磨き剤にも利用されている。
■肌細胞活性・抗酸化作用
肌を保護したり、エイジング効果がある。
かかとのひび割れ、ひじやひざのかさつき、あかぎれ、しもやけなどにも。
ミルラ精油はどんな香り?

ミルラの香りの特徴とは?
樹液が固まった樹脂のミルラは、独特のウッディ感を持ち、バルサム調でオリエンタルとも表現されます。
また、薬のような香りが混ざっている感じもありますし、日を変えてミルラを嗅いでみると、さわやかさを感じることも。
精油はその日の気分や体調によって、香りの感じ方が変わることがあります。
また、香水ブランドのジョーマローンロンドンのフレグランス ディレクターは、ミルラとトンカビーンズを融合させた香りを高貴で官能的、また革新的だと紹介しています。
テイスティング ノート
ミルラとトンカビーンは、退廃的で魅力的、希少性もあり、華やか。新しいコロン インテンスのコンセプトにぴったりだと思いました。これまでのコロン インテンスのラインナップには、ぬくもりのある香り、オリエンタルで繊細な香りのカテゴリーが無いと思ったのです。
― セリーヌ・ルー フレグランス ディレクター ―
トンカビーンズ:マメ科トンカの木の種子から採れる甘いふんわりとした香料で、桜餅や香りキャラメルの香りと例えられる。
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ミルラ精油はスピリチュアルなの?

なぜ、ミルラがスピリチュアルな精油と言われるのか?
理由は古代の香料の使われ方にあるようです。
古代エジプトでは、神官たちによって「キフィ」という香りが調合され、神殿で焚かれていました。
王族たちが「聖なる煙」として魔除け、鎮痛、瞑想、快眠、快楽のために利用したといいます。
■キフィの調合例
ワイン、レーズン、ジュニパー、アラビアゴム、ヘナ、ハニー、シナモン、カラムス(菖蒲の仲間)、ペパーミント 、ガランガルルート(生姜の仲間) 、オリス(アイリス)、ミルラ、サイプレス 、ピスタチオ、ベイ(月桂樹・ローレル)、シトロネラ 、オレンジ、カルダモン 、フランキンセンス 、ベンゾインなど。
ミイラ作りに使用されたり、魔除けや瞑想、宗教儀式に使われてきたことから、現在でもミルラはスピリチュアルなものというイメージがあります。
幸福感や陶酔感を促す成分のβ-カリオフィレンが含まれているので、神事に使用されるというのも納得です。
気持ちが落ち着かないときにはミルラ精油を使って、瞑想やヨガをしてみるのもよいですね。
ミルラの香りが心を浄化し、不安を鎮めて気持ちをスッキリとさせてくれます。
神秘的な世界に浸りたいときは、ミルラのお香(インセンス)を焚いて、香りを燻らしてみるのもおすすめです。
また、ミルラ精油をディフューザーに垂らし、目をつむり香りを嗅いで深呼吸を続けると、気持ちがリラックスしていくでしょう。
ミルラ精油の禁忌・注意点
ミルラ精油の禁忌・注意点
ミルラ精油の禁忌・注意点
妊娠中は使用を控える。
妊娠中は特に香りに敏感になりやすく、今まで気にならなかった生活の中の匂いや香りに気がつき、嫌悪感が出たりすることがあります。
ミルラ精油は通経作用(月経を促す作用)が強いほうではないですが、参考文献では妊娠中は控えるようにと指摘されています。
妊娠中は香りに敏感になる。
芳香浴以外の妊娠中のアロマテラピーは注意が必要なので、各精油の禁忌・注意事項を確認する。
ミルラ精油の注意点・ミルラ精油は固まるの?
ミルラ精油は香りの持続性はミドルからベースノート。
香りの強さは中程度、ブレンドするときは主張しすぎないように注意します。
樹脂から採れた精油は粘度が高いので、精油瓶のキャップ口に残った精油が固まり、フタが開けにくくなることがあります。
べたついてきたときは、エタノールやウェットティッシュで拭き取りましょう。
ミルラ精油の使い方・ブレンドレシピ

ミルラ精油のブレンドレシピ
水を利用した超音波ディフューザーにミルラと柑橘系をブレンドしたレシピです。
電源アダプタをセットしてから水を入れ、精油をゆっくりとたらします。
※超音波ディフューザーの取り扱いについては、説明書を確認しましょう。
■ディフューザーの芳香浴(水100㎖のディフューザーの場合)
- ミルラ精油 1滴
- レモン精油 1滴
- ベルガモット精油 1滴
ミルラは現実世界に目をむけさせてくれる精油。
レモンとベルガモットの柑橘精油をプラスして、すっきりとさわやかに香らせましょう。
ブレンドレシピ・かかとのひび割れの保湿クリーム
かかとのひび割れは乾燥と皮脂不足による場合が多いですね。
お風呂上りにミルラ精油のブレンドクリームで保湿し、皮膚をやわらかくしていきます。
ミルラ、フランキンセンス、ゼラニウムなどの精油は、肌をやわらかくする作用があります。
香りを楽しみながら、スキンケアにも活用していきましょう!
■かかとの保湿クリームの作り方(ハードタイプ)
<材料>
- ゼラニウム精油 2滴
- ミルラ精油 2滴
- フランキンセンス精油 2滴
- ホホバ油 25㎖
- みつろう 5g
- はかり(電子スケール)、ビーカー、かくはん棒、ラベルシール、クリームの容器
<作り方>
①ビーカーにみつろう5g とホホバ油25㎖ を入れる。
②ビーカーを電子レンジ600wで、まず1分加熱。溶け具合をみて、30秒ずつ加熱する。
③みつろうがだいたい溶けたところで、精油を一滴ずつ入れ、よくまぜる。
④クリームの保管容器に流しこみ固まるまで置く。(透明色→白濁)
⑤作成日、精油名などを書いたラベルシールを貼る。
※ミツロウの溶け具合を見ながら、電子レンジで数回、加熱する。
※希釈濃度1% のアロマ保湿クリーム(バーム)。
ミルラ精油のブレンド相性
ブレンドオイルを作るときに、オリエンタル調の雰囲気を出したいときはミルラ精油をブレンドするのがおすすめです。
香りの強さは中程度、香りの持続性はミドル~ベースノート。
アロマブレンドオイルでは。保留剤の役目をします。
■柑橘系:レモン、オレンジスイート、グレープフルーツ、ベルガモット、プチグレン
■ハーバル系:ゼラニウム、クラリセージ、ラベンンダー、ローズマリー
■樹脂系:フランキンセンス
ミルラ精油の価格は?
ミルラ精油は少し価格が高め。
精油のラベルには、Commiphora myrhh(コンミフォラ ミルラ )、またはCommiphora molmol(コンミフォラ モルモル)と表示されていますが、どちらも同じミルラです。
価格の目安は公式オンラインストアでの価格。
■生活の木
国内外の提携農園(パートナーファーム)から厳選したオーガニックハーブや精油、植物油などの販売。全国約110店舗の直営店あり。エコサート、JASなどの認証を受けた有機精油もあり。
原産国:ソマリア
価格の目安:3㎖ 取り扱い無し。10㎖ 6,160円(税込)
※2021年2月から公式HPでは受注生産となります。
↓こちらはすぐに注文できます。
■フレーバーライフ(Flavor Life)
アロマテラピー商品の通信販売を日本で最初に始めた会社。
英国Aromatherapy Trade Council(アロマテラピー精油取引協議会)及び、Soil Association(英国土壌協会)加盟社より輸入し、100%ピュア&ナチュラルな精油を販売。
原産国:ソマリア
価格の目安:3㎖ 1,760円(税込)、10㎖ 4,290円(税込)
■フロリハナ(FLORIHANA)
フランスにフロリハナ蒸留所を持ち、エコサート・JAS認定100%オーガニックなど、オーガニック認定商品にこだわり、精油を蒸留販売。こちらは1滴が約0.03㎖。
原産国:ソマリア
価格の目安:5.03㎖(5g)2,530円(税込)、15.08㎖(15g)6,380円(税込)
■こんな精油ブランドを紹介しています。
- オーガニック先進国などの認証機関で精油の品質検査がされている。
- 精油ブランドや販売店が、輸入された精油を企業独自に成分分析をしている。
- 精油の成分分析表などの表示がある。
精油ブランドによって、同じ精油でも香りの雰囲気が少し異なることもあります。
原料になる植物が育つ産地や収穫時期が異なることで、含まれる芳香成分に多少の違いが出てくるからです。
ミルラ精油のプロフィール

精油名 | ミルラ Myrrh |
学名 | Commiphora myrhh(コンミフォラ ミルラ ) Commiphora molmol(コンミフォラ モルモル) |
科名 | カンラン科 |
主な産地 | インド、ソマリア、エチオピア |
抽出部位 | 樹脂 |
抽出方法 | 水蒸気蒸留法 |
主要成分 | エレメン、オイゲノール、クミンアルデヒド、α-ピネン、リモネンなど |
ノート | ミドル~ベース |
印象 | 独特の辛みや苦み、スモーキーさとウッディ感 |
禁忌・注意事項 | 香りは中程度。粘度あり。 妊娠中は使用を避ける。 |
ミルラ精油のまとめ
ミルラ精油はフランキンセンスやベンゾイン(安息香)と同じ木の樹脂からできた精油。
香料としての歴史が古く、ミイラの防腐剤や宗教儀式で使われてきた神聖な香り。
現在では苦みとスパイシーな香りが、ブレンドに使用されると官能的とも言われ、香水にも利用されています。
また、抗炎症作用があることから、傷ついた肌の再生にもよいミルラ精油。
アンチエイジングに効果的なフランキンセンスとブレンドすれば、さらに相乗効果を生み出せます。